エレファントカシマシDB 2009/10/25(日) 日比谷野外大音楽堂 普請虫さんのライブレポート

一番下へ

普請虫さんのライブレポート

雨上がり、朧曇りの秋空。午後2時過ぎからリハーサルが始る。そうそうに宮本本人の歌。【奴隷】【俺の道】【達者】【夕べの空】【おかみさん】【凡人】【生命賛歌】【彷徨】【人生の午後に】【リッスン】。およそ10曲であるが、入念に演奏チェックをしていた。そして【おかみさん】のリハの頃から、宮本以外のボーカルがときおり漏れてきた。石君の歌唱である。これは「あとは石君が歌って」という指示が塀越しに聞こえてきたので間違いない。5曲くらいみっちり歌わされたので、喉つぶれてたかもしれない。私は苦笑というより、爆笑に近い笑みで聞いていた。しかし、突然歌うようにふられて空で歌えるのだから(歌詞を暗記しているということ)、宮本より石君のほうが歌詞覚えがよいに違いない。

開場後、昨日とは違いスムーズに人が会場に散らばる。物販のブースを右手の手洗い所前のテントに移したからだ。そして、雨具がいらなかったこともあり、整列入場が速やかに進んだ。昨日同様に会場は満員。左手関係者通路の階段まで人で埋まっている。

 昨日と同様、SEもなくメンバーが入場。開演時刻5分過ぎくらい。25日は頭から4人編成。印象的なトミのドラムでスタートするも、ちょっとしたリズムのズレが気になってやり直し。【奴隷天国】。のっけから<あらくれ>モードにわしづかみされた円形劇場に、「何笑ってんだ」「何踊ってんだ」と睨め回す宮本御大、ココロをざくざくにする。久しぶりにぞくぞくするような怖気を覚える。続く【俺の道】も同様。しかし、雨が降っていないと音抜けがよく、音楽堂の残響がよくわかる。ドゥドゥドゥの宮本スキャットがよく木霊した。2曲目から6人編成。

【達者であれよ】と【石橋たたいて八十年】はうって変わってご機嫌モード。MCでも言っていたが、晴れ間の見える天気になった心地よさがあるようだ。歌い手としては雨の湿気があったほうが、声がれしなくて調子いいみたいだが、精神的には25日の方がすっきりしていたようだ。【石橋】の後半の各国都市の読み上げのリストが変わっていた。「TOKIO」を早く出し過ぎたのと、「日比谷」コールのあとの受けが25日はいまいちだった。

【暮れゆく夕べの空】は今年の野音を象徴する曲だが、2日目は宮本の声の調子が厳しかった。リハーサルで石君に歌わせたのも、本番のために声帯を温存したというところがあるのだろう。風邪もしくは前日の疲労が残っているようだった。しかし、声の良し悪しにかかわらず、声量と迫力という意味では毎度胆を抜かれる。
【悲しみの果て】と【おかみさん】は次の4人編成パートとのよい区切りになった。前者は導入パートの締めくくりの意味、後者は6人編成の力強さの象徴的楽曲の意味を帯びていた。つまり、4人編成のパートは作っているものの、現在と過去の地続きな感じ、決して断絶していないことが理解できるような構成だった。喉の調子がよかった前日より、2日目の【おかみさん】は壮絶だった。

「よくあんなアルバムを出せたと思う。その中でもマニアックで、でも大好きな曲です」といって【凡人】。武道館公演の【シャララ】でも感じたが、エピック時代の老成に年齢が追いついてきて、若い時分に足りなかった枯淡が備わっている。歌詞の深みが演奏によく沁みていた

私個人としてのハイライトは次の【やさしさ】と【土手】であった。というのも25日はトミのドラムが近年で一番冴え渡っていて、宮本の声がれを補ってあまりある働きをした。【やさしさ】は前日うまくリズムがあわずにヨタヨタしたのだが、25日はほぼ完璧。うつくしいバラードだった。そのご褒美のようにはじまった【土手】は、唯一の自分の楽曲とあって、さすがのトミもやや気負って、叩き急ぎした箇所があった。しかし【土手】は埋もれた名曲でもっともっと陽の目を見るべきバラードだと思いを新たにした。次の【珍奇男】まで4人編成。4人編成であると、ファンク色よりもロック色が強いのだと感じた。

サポートの2人が帰ってきて【生命賛歌】。「ダブル札幌コンビ」である。今年は『俺の道』の楽曲の輝きが素晴らしかった。それだけは両日遜色なかった。その勢いをかりた【曙光】。数年前、AXで聞いた【曙光】はササクレ感や克己の思いが薄いように感じたが、今はすばらしく漲っていて、久しぶりに燃え立つ思いになった。とくにトミのドラムと宮本「アー」という咆哮が重なる間奏部分にしびれた。
【人生の午後に】と【シグナル】は『町を見下ろす丘』パートであった。アルバムの中ではまさに指折りの傑作である『町丘』は、その収録曲もまったく充実して、どのライブで披露されてもそのライブにあった部品(ピース)になる。

【晩秋の一夜】は大好きな曲であるし、この秋の野音で聞きたかったのであるが、少し勢いあまって<侘び>を忘れた気がする。これは曲順の問題だと思うのだが、【シグナル】ですっかり迷いが醒めてしまっているから、季節に死に遅れた寂しさが薄らいだのではないか。つづく【翳りゆく部屋】は情感たっぷりで演奏もしっかりしていたが、正直、宮本の声の調子が悪すぎた。盛り上がりの高音ではまったく潰れ声だったから、美しい歌世界を再現しきれなかった。24日なら問題なく歌えていたと思われ、残念に思った。

【OH YEAH!】【ハナウタ】から本編後半パートに突入する。ともにキラキラした楽曲だから、現在の<あらくれ>とそぐわないと思いきや、なかなか爽やかに歌いこなした。ただ、やはり<あらくれ>ソングや中盤のバラードの印象が強く、25日の中では印象が薄まった。
前日同様【FLYER】から【ファイティングマン】までを本編ラストパートにしていた。この辺は気分次第、曲を出し入れして、【ファイティングマン】で〆るという、王道の決めパターンが適用されていた。拳(こぶし)をおろす暇がないくらい、立て続けにハイライト曲で、ほかの人の詳細な解説のような記憶がない。【ゴクロウサン】の出だしの指示が、まるで普通のねぎらいの言葉のようだったというのは、おぼろげだが覚えている。

しばし舞台袖に下がって間(ま)がある。雨の前日と違い、アンコール拍手を待つ余裕がある。ただし、ほかのミュージシャンのアンコールの余白より大分短い。もったいぶる時間があるなら、練習した楽曲を見せたい、という前に出る気持ちが強いのだろう。それがやるごとに増える演奏曲数にも現れている。
アンコール1曲目はまさかの【あの風のように】。リハでもやっていなかったし、昨日の演目にもなかった。まして、今日のセットのなかに入る曲ではないから、当日アンコールになってやりたくなった曲なのではないか。爽快さを歌う楽曲を頭でやりたかったのだろう。次の【友達がいるのさ】にも上手く接続される。【友達】はまさしく野音のための東京の歌である。

【デーデ】が不思議な位置に入って、王道のアンコールセットに突入。【デーデ】のトミのカウベルが不思議な鳴り方をしていたのは、もしかしてスティックが折れていたとかそんなことなのだろうか? ユニバーサル時代の自信曲が並んで、〆はファーストの【花男】。会場中が身振り手振りにゆれる。

会場使用時間ギリギリだと思われる最後に、セカンド・アンコールに飛び出す。指定席を離れて家路につこうとする人たちが慌てて、座席に戻る様子が見られた。<あらくれ>モードだからさぞかしギラギラになるのかと思いきや、【ガストロンジャー】は逆に和やかな励ましソングに聞こえた。

2日間通しての感想は、24日が歌に優れた公演、25日は演奏と心意気に優れた公演だった。平均30曲以上、約3時間の公演内容は満腹以上のものがある。しかも、正味43曲(被った曲目を引くとそうなる)。アルバム4枚分に相当する楽曲である。これは2日間セットで20周年記念興行だったと考えるのが正しいようだ。サポートの準・メンバーを除いて何のゲストがあったわけではないが、まさに演奏そのもの、セットリストそのものが豪華なフルコースであった。

日比谷の森に集まったファンには、場外場内の隔てなく、ひとつの空間であったことは間違いない。チケットがない、お金に余裕がないと思っている人も、もし日比谷公園まで来る手段が確保できるなら、ぜひ年に一度はあの場所にいることをおすすめしたい。外でも、そんなに歪んでは聞こえないので大丈夫。集え、心意気の音楽ファンよ。

No.曲名回数
1奴隷天国4回目
2俺の道13回目
3達者であれよ4回目
4石橋たたいて八十年2回目
5暮れゆく夕べの空2回目
6悲しみの果て27回目
7おかみさん4回目
8凡人-散歩き-3回目
9やさしさ7回目
10 土手初!!
11珍奇男14回目
12生命賛歌18回目
13曙光6回目
14季節はずれの男6回目
15ジョニーの彷徨5回目
16人生の午後に4回目
17シグナル12回目
18晩秋の一夜2回目
19翳りゆく部屋4回目
20OH YEAH!(ココロに花を)3回目
21ハナウタ~遠い昔からの物語~6回目
22FLYER9回目
23コール アンド レスポンス7回目
24ゴクロウサン6回目
25ファイティングマン15回目
26あの風のように2回目
27友達がいるのさ9回目
28デーデ15回目
29笑顔の未来へ13回目
30俺たちの明日16回目
31Sky is blue4回目
32花男10回目
33ガストロンジャー22回目


持帰り用体験回数(コピーしてご利用下さい)


持帰り用セットリスト(コピーしてご利用下さい)

一番上へ