エレファントカシマシDB 2010/01/09(土) 渋谷C.C. Lemonホール 普請虫さんのライブレポート

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普請虫さん

 いつもどおりにすごかった。そして、数曲ながら演奏された昔日の楽曲も、今あたらしく磨き直されて、現在の輝きを放っていた。また、いつも思うことだが、新曲はおろしたての時がいちばん鮮度が高く、完成度も高い。

 【Sky is blue】。スライドギターが、うまく弾けていた。声の好調さが出だしから爆発。近作から始めたということに、意気込みを感じた。
 ステージライトが落ち、薄暗い照明のなか【真夜中のヒーロー】。初めて聞いた。聞きたかった曲だ。名曲ぶりが、ライブで聞くとより一層にあざやかであった。この曲はニヒル(虚無的)なヒーローの歌である。つぶやくような歌唱が似合う。
 【今はここが真ん中さ!】。この曲をやると盛り上がる。ギターを手放し手持ちマイクで全力で歌うので、その声量や迫力がいかんなく発揮される。「みんな始まるよ」のかけごえは、体操のお兄さんのようだった。この曲の途中で指さされた気がした。気のせいかもしれない。
 「もうご承知のこととは思いますが、何歳になってもおかみさん。…」というような恒例のMCから【おかみさん】へ。2009年野音の再現。曲の最後の方で「同じこと言ってんだよ。25世紀前から同じこと言ってんだよ」と【ガスト】のようなアドリブ。印象的だったのは力強い成ちゃんのベース・プレイ。太い。
 間髪いれず、打ち込みのトラックが鳴って、【ゴッドファーザー】。ライブ版がなじみやすいのは、トミや成ちゃんがサポートしているからだ。最後、もごもごして歌詞を誤魔化した。
 ふたたびステージライトをほとんど落とし、真っ暗ななかで静かに「探してる」と歌い出す。久しぶりに聞いた【すまねえ魂】。石君を前に押しだし、ステージ中央に来るように言いつけていた。この楽曲は【ジョニーの彷徨】とイメージがダブる
 【ネヴァーエンディングストーリー】。切なさと美しさが共存していて、しかもそこにロックのダイナミズムがあるという、エレカシらしい楽曲。歌詞飛びはあったが、それを越える痛切さが胸を刺した。
 「けっこうよい歌詞で、大事に歌っていきたい曲です」と【絆】。録音バージョンとは別アレンジの【絆】。【風に吹かれて】のNew Versionに近い印象のアレンジだった。歌係に尽くしたのでとてつもなく大きな世界観を見せた。
 「初詣も全然行ってないんです。いつもおみくじを引くんです。去年大吉がいっぱい出て。次に凶が出ると嫌なんで引いてません。けっこう当たるんで。みんなそんなことないですか」といったMC。
 唯一、季節感のある楽曲【真冬のロマンチック】。「年が明けて、一人で部屋で音楽を聴いたり、家の引き出しを整理したりすると思うんだけど。音楽っていいなっていう、そんな曲です」そんな話をして、「OKトミ」からスタート。歌詞の内容から年末・年始向けの曲だと思う。今回は、目立つ座席だったので控えめに楽しんだ。
 【こうして部屋で…】。意外な選曲。ファンの人気から考えると【リッスン】に行きがちなところを、あえてこちらを選択するのがミヤジらしい。そもそも、宮本本人の思い入れの深いラブ・バラード。テーマとしては【やさしさ】とほぼ同じ。
 【ジョニーの彷徨】。確かこの歌だったと思うが。後半の「見上げればスカイブルー」のところで虹を描く仕草をしていた。MCでは「去年いっぱい出たフェス全部でやった曲です」、と紹介していた。
 照明が夕焼け色になって、楽器交換が行われたそのあと。しばらくの沈黙。宮本のみが次の曲を理解していなかったらしく、自分のギターを探してうろうろする。そしてドラムの冨永に次の曲を教えてもらって納得。
 ギターなしで【化ケモノ青年】。石君のギターからスタート。サビ前、おきまりの手拍子で大盛り上がり。ただ、発表当時のささくれた感じはなかった。会場を指さし、おきまりの全員「化ケモノ青年」アピール。
 トミの印象的なドラムからスタート。【クレッシェンド・デミネンド】。会場のざわめき。人気の高い楽曲だ。会場には新しいファンが多いのかな。私は聞き慣れているので、それほど驚きはしなかった。
 「みんなを祝福する歌です」。この定番のMCも板に付いてきて、本当にそういう歌になっている【ハナウタ】。きらきらした感じが嘘っぽくないのがよい。一瞬の「1」、二人の「2」を指でかざしながら、思いをこめて歌う宮本の姿が頼もしい。蔦谷好位置の見せ場のおおい曲でもある(コーラスに鍵盤フレーズ)。「好位置ぃ」と後奏の見せ場を紹介。。
 「どうでもいいような思い出とかあって。すき焼きご馳走になったことがあって、あのとき帰って欲しそうな顔してたんですよね」。しみじみとそう話す。知人の家あたりで、帰りそびれて、夕飯を要求したようなカタチになったことを反省しているらしい。「そういうのが積もり積もって、色々な思い出があるけど、前に進もうぜ!そんな曲です」。というMCに続いて。【さよならパーティー】。
 「じゃ、恥ずかしがらずに歌います。やっぱ新曲というのはいつも恥ずかしいもので」と前置き。大拍手を受ける。曲前に【赤い薔薇】のイントロを軽くかき鳴らした。【幸せよ、この指に止まれ】と舌を噛まないように、一音一音ていねいに発音。 断片だけ聞き取れた。
 【赤き空】。「赤い空」「出かけて行こう世間へ」というような歌詞だったと思う。阿久悠の作詞を思わせるような、情緒と郷愁を感じさせる歌謡曲然とした楽曲だった。
 本編ラストのファンファーレ【FLYER】。会場にはどう響いていたかわからないが、ミヤジのギターがとんでもなくボロボロだった。席の関係上、宮本ギターが一番よく聞こえたからかもしれない。
 ミヤジのカウントともに、【俺たちの明日】。6人編成でやると昼海幹音がアコギを担当してくれるので、とても安心して聞くことができる。テンポが原曲よりもいくぶん早かった気がする。この曲ではミヤジはリズムギターなので、それほど乱れることなくこなしていた。「サンキュー」と一声あげて楽屋に下がる。

 アンコール1曲目、【まぬけなJohnny】。この日のセットリストのなかでも意外度が高い。これまた、思い入れの深い曲のようだ。ファンの評判はそれほど高くないが、アルバムツアー時の成功のイメージが強いのだろう。ときおり自信をもって披露する。【Johnny・B・Good】のフレーズが登場する後半をバンドみんなで楽しそうに歌っていた。また、「ファミレスでコーヒー飲んで」を「コンビニでサンドウィッチ買って」と変更していた。なかなか渋い選曲である。
 「俺たちのテーマ曲です」と【地元のダンナ】。この「俺たち」はどうやら宮本・石森・冨永・高緑の四人のことを指しているようだ。赤羽四人衆。発表当時は歌詞の奇抜さが手伝って、「?」が浮かんだが、今は単純に格好いいと思えるようになった。
 【笑顔の未来へ】。イントロなしの歌い出しなので、出だしは宮本待ち。リズムをとりつつうまく入れなかったのか、ややスタートに手間取った。歌唱はすばらしかったが、演奏があまり調子がでなかったミヤジ。でも、印象はとてもご機嫌だった。
 昨年1年の成功を象徴する、【桜の花、舞い上がる道を】。シングルの発売は一昨年のこと。しかし、アルバム『昇れる太陽』のキー曲であり、さらに8年ぶりの武道館公演のテーマ曲であったこともあり、2009年のエレファントカシマシを端的にあらわした。レコード会社からの発注で出来た、この曲。本来はそんなに好きではない「桜」をつかって、エレカシらしい楽曲に仕上げ、そのためファンによろこびをもって受け止められた。そのため、思い入れのすくない「桜」の歌が大切な定番のひとつになるという、ファン発信の定番曲なっている。不安げに照れながら弾いていた、名古屋ELLでの初演が嘘のようである。ギターのボリュームをそのままにして、ノイズが鳴るなか退場。

 本年の新春コンサートの〆曲【待つ男】。本当の意味のアンコールはこの【待つ男】1曲。余力全部を叩きつけてきたかのような、すさまじいエネルギー。まさに正月にふさわしい「富士に太陽」というバンド・モチーフ。なんと言っても、その声の伸びやかさが印象的で、23曲を歌い終えたあとの最後の曲とは思えない、声がれのない歌唱だった。本年の新春コンサートの印象はまさにこの【待つ男】に神髄があった。

No.曲名回数
1Sky is blue5回目
2 真夜中のヒーロー初!!
3今はここが真ん中さ!7回目
4おかみさん5回目
5ゴッドファーザー3回目
6すまねえ魂6回目
7ネヴァーエンディングストーリー2回目
83回目
9真冬のロマンチック3回目
10こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい4回目
11ジョニーの彷徨6回目
12化ケモノ青年12回目
13クレッシェンド・デミネンド -陽気なる逃亡者たる君へ-9回目
14ハナウタ~遠い昔からの物語~7回目
15さよならパーティー10回目
16 幸せよ、この指にとまれ初!!
17 赤き空よ!初!!
18FLYER10回目
19俺たちの明日17回目
20まぬけなJohnny5回目
21地元のダンナ6回目
22笑顔の未来へ14回目
23桜の花、舞い上がる道を8回目
24待つ男4回目


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持帰り用セットリスト(コピーしてご利用下さい)

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