エレファントカシマシDB 2012/10/14(日) 日比谷野外大音楽堂 たわらがたさんのライブレポート

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たわらがたさん

定刻に宮本先生現る。ステージ上でこんなに笑ってる宮本先生見たことない。その笑顔を見て、どれだけみんな安心したことか。曇り空の下、アコギとファルセットの優しい『夢のちまた』は、この辛い出来事も、今日の特別なライブさえも、いつしか流れて消えていくさと歌っているかのようだった。先生はみんなの顔をしっかりと見て、謝罪と病気の経緯の説明を始めた。「外リンパ瘻という病気で。みんな、びっくりさせちゃって、がっかりさせちゃって、それからたくさん心配させちゃって、本当にごめんなさい。このとおり身体は元気です」温かい大きな拍手。それからは明るく少しおどけたふうに、みんなが安心するように話してくれた。でも「手術は喉に管を通すので、場合によっては、声が、出なくなるかもしれませんが、命を優先しますとか言われちゃって」と話したときには、「声が」と言う前に、一瞬、苦笑しながら言葉を詰まらせたように見えた。聴力だけでなく、声を失って生きることまで考えさせられたのかと思うと、あまりのことに涙が出そうになった。そして弾き語りの『悲しみの果て』が聴けるとは。あの日先生は、「俺たちの希望の歌」と言ってくれた。歌詞の一つ一つが沁みた。張らない声も本当にいい声。神様ありがとう。続く『約束』はビックリするほど素晴らしかった!「まちがってなんかない 自分との約束を叶えろ」先生、約束してくれるんだなぁと思った。丁寧な歌唱だった。「友達を紹介します」で蔦谷さんとヒラマさん登場の『リッスントゥザミュージック』も高音を張らずにファルセット。終わると先生、腰を押さえて「腰が痛くなっちゃって。『手術してから腰が痛いんですけど』『脚が痺れるんですけど』とか言ったら医者に『ありえない!』って言われました。なんか病気に酔うっていうか…入院したから自分は特別なんじゃないかって」会場笑。そして「ごめんねぇ、今日…、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしちゃって。20何年やってきたからとかじゃなくてね」と。「ごめんねぇ」という話し方がとても優しくて率直だった。いや今日こうしてミヤジの歌が聴けることが本当に嬉しいよ!という想いをこめて拍手。「じゃ古い曲を。野音なんで」と、今夜は月が出ていないなというふうに空を見てから『月の夜』。自分の勘違いじゃなければ、キーを1、2音下げた『月の夜』だった。声の調子がどんどん良くなって、すごい歌唱だった。こういう状況で、こんな圧倒的なライブを成立させてしまう宮本先生の底力。終わったとたん雨が落ちてきて、観客がコートを出すのを見た先生「雨降ってきちゃった?」と前方に来て空を見上げ、スタッフに「どうしよう?」と。会場は「いやいや大丈夫だから続けて!」という反応。「まだやってもいいですか?あとで古い友達も出てくるけど…」大歓声!急ぎめに『うつらうつら』。会場はまだカッパでガサガサしていたが、先生、とにかく歌いたいって感じでかまわず歌い出す。こういう贅沢な曲を聞けるなんて充分に「野音」だなぁと思った。間髪入れず『見果てぬ夢』。嬉しすぎる選曲。これも気持ちがこもってて、叫ばない声が沁みた。次に弾きだしたのは、アップテンポで軽快な曲。痛快で爽やかで。新曲だ。『涙を流す男』、めっちゃくちゃ良かった!歌もギターも乗りに乗って素晴らしかった。椅子の背もたれをまたいではいるが、完全に曲に入って夢中で歌っていた。終わるとちょっと息切れしながら会場を指差し、「じゃぁ…。心して…。みんなに捧げます」と言って『花男』!大歓声!先生ソロの『花男』、凄い迫力。アコギ一本で、しかもがならない歌い方だというのに。今さらながらに先生の凄さを思い知った。「俺の姿を忘れるな」「どうせやるならドンとやれ」をしっかりとココロに刻んだ。『俺たちの明日』、本当に幸せそうに歌っていた。こんな時でも、私たちを勇気づけようとしてくれる。蔦谷さんとヒラマさんが再び登場し『笑顔の未来へ』。先生のアコギ素晴らしかった。「どんな悲しみからも…立ち上がるのさ」と「すぐに」のところを歌わなかったので、胸がしわりと痛んだ。でももうすっかり、先生を心配する以上に、先生の歌とアコギに酔いしれるコンサートになっていた。「ありがとうございます。やって良かったです。歌が、歌えて」と先生が話していると、石くんやトミ、せいちゃんが現れる。石くんの後ろ髪よ…。時間が押しているのかササッとメンバー紹介。「オンベース高緑誠治。今日もダンディに決まってます。オンドラムストミ、ツアー頑張りました。それからギター石くん」と石くんにインタビューマイクを向ける素振りで「良かったですね、あなたも24年めもここに立てて」みたいに言い、石くん「ありがとうございます」。先生「ちょっとまだ爆音が怖くてね、ライブはしばらくお休みするんですが、必ず戻ってくる、…っていうか、このとおりもう、戻って来てるんで」会場拍手と歓声。そして最後は、トミの合図で始まった『ズレてる方がいい』。始めの「ああかりそめの夢でも ないよりはマシさ」の歌声、今でも忘れられない。なんて感動的な曲だろう!時々左耳を押さえながら、ちょっと辛そうに歌っているところはやはり痛々しくて、ハラハラしながら見守ったけれど。早く先生がエレカシのズシンと重い爆音サウンドの中で、気持ちよく歌える日がくるように。今日の先生の命がけの勇姿をしっかり目に焼き付けた。戦いにこだわって敗れる定めでも、うつろうこの世間にゃズレてる方がいい。エレカシがずっと追い求め続けている夢、これからもその行方をずっと見守っていきたいと思った。力を出し切ったような先生は「ありがとうございました」と言い、客席に手を振って「また会おう」と、いつものようにサーッと退場していった。ステージの照明はすぐに消え、観客はアンコールをしてよいのか戸惑いながらも拍手は続く。すると「本日の公演は以上で終了になります」のアナウンス。とたんに会場中から割れるような拍手が起こった。宮本先生に、感謝の気持ちとエールが届くように。もうこれでみんな、安心して待とうと思えたと思う。何とも言えず深くココロに沁みたコンサートでした。こんなにも胸が熱くなった一時間はきっと無い。まだ爆音が怖いと言う先生が、今日のライブを「ソロ・宮本浩次」としてでなく、最後にバンド全員での演奏を披露したことに、男を見たなぁと思った。ファンに対して今の自分の現状をちゃんと見せようという、誠実さと説得力もあった。声はとても良かったし、本当にあとはもう、爆音への不安だけなんだろう。みんなの前で歌って見せることで安心してもらいたい、みんなに直接説明したいという気持ち、そして何より、歌が歌えることがこんなにも嬉しいという思いが、しっかりと伝わった。そしてやっぱり私たちも、先生の歌がなくちゃ生きていけないと思った。今日のライブで、先生が少しでも安心して、元気になってくれていますように。とにかく今はゆっくり休んで、また最高のコンディションでステージに戻ってきてくれることを楽しみに、いつまでも待っています。
エレカシ、宮本さん、スタッフのみなさん。素敵な夜を本当に本当にありがとう。先生の生き方は、最高にかっこいいです。

No.曲名回数
1夢のちまた2回目
2悲しみの果て43回目
3 約束初!!
4リッスントゥザミュージック17回目
5月の夜2回目
6うつらうつら3回目
7 見果てぬ夢初!!
8 涙を流す男初!!
9花男6回目
10俺たちの明日29回目
11笑顔の未来へ26回目
12 ズレてる方がいい初!!


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