『敗北と死に至る道が生活』その44
私が勤務している職場でサーバーのバックアップが徹底された。なんでもISOの取得を目指して業務全体を見直しているらしい。こうなると企業は『ISOの取得』だけを目的にしてしまう。『作業の体系的な管理体制、標準化を決め品質目標を明確にしよう』という本来の目的なんかどうだっていいのだ。『ISOの取得』だけを目指すため、管理すべき資料にも『非管理』という印を押して結局管理外に置いてしまう。本当の目的なんか誰も考えていない。
消防署が点検にくるから火災報知器や消火器の周りの物を、その日だけ片付けるといった具合だろうか。
私はサーバーのOSバックアップを任された。世の中『バックアップ』だけは重要な作業だと位置付けられている。しかしいざコンピューターが壊れたらどうするのだろうか。テープデバイスにバックアップした『バックアップデータ』を戻すにはテープデバイスが必要である。テープデバイスを使うにはOSが必要である。そのOSのバックアップはテープに入っている。結局戻せないのだ。
缶詰を開けたいのだけれど、肝心の缶切りはその缶詰に入っている。といった具合だろうか。
戻せないバックアップを取ることに何の意味があるのだろうか。と思いながら自動バックアップに組み込んだ。部長が決めた方針を達成するだけの為に。『缶切りをもう一つ買ってくればいいじゃないか』程度の小言は言われるだろう。『私はパイナップルが嫌いだ』程度の返しは準備してある。