『敗北と死に至る道が生活』その53
私は横断歩道を歩いている老婆がいたら、おんぶして渡ってやる。くらいの心意気はある。みんなが見ているから蹴飛ばすだけだ。会社でも誰も居ない瞬間に灰皿を掃除している。誰かに見られていたらやらない。偽善的だからだ。
たまたまテレビを点けたら相撲をやっていた。子供のころの夕餉の時間は親父が相撲を見ていたっけ。私は相撲の間合いがよく分からず、つまらないと思いつつも、親父が見ているのだからチャンネルを変えてくれなどと言える筈も無いと、子供心にも思っていた。
当時私が『マンガが見たい』と言い出したとしたら、親父はどうしただろうか。『一家の主が見ているのだから我慢しろ』と言うだろうか。それとも子供がかわいいから『好きなチャンネルを見なさい』と言うだろうか。
『好きなチャンネルを見なさい』と言われて育った子供たちが増えたのだろう。自分の思い通りにならないとすぐにキレる。『やさしさ』って何だろう。