エレファントカシマシDB 管理人の日記 2003/05/07(水)

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『敗北と死に至る道が生活』その262
部屋を片付けていたら、2001年6月3日の日記が出てきた。以下当時の原文のまま。



 ロックミュージシャンがいい人である必要なんか何処にもない。

 宮本浩次という名のロッカーが人間的にどうのこうの問われる位置にいないことは明白である。しかし明白であるこの事実も数パーセントの人間にしか受け入れられていない。

 にわかには信じがたいが、宮本浩次自身がこの問題に直面してしまっている気がしてならない。私がそう思ったのは、先日の札幌公演(2001年6月3日の日曜日)である。

 Zeppというライブホールはスタンディングである。当然客との距離が物理的に近い。最も接近したら1mくらいではないだろうか。ここで勘違いしてしまうのが”精神的にも近いんじゃないか”ということである。エレカシはそんなフワフワしたバンドではない。キロロじゃないんだから。

 客の「髪伸びたね」の一言に宮本浩次はキレた。別に「髪が伸びたこと」自体をとやかく言われたことがイヤだったのではなく、「気安く話しかけられ進行を邪魔される」ということがイヤだったのだろう。「髪伸びたね」の一言くらい無視すれば済む訳であって、実際にはその他いろいろ馴れ馴れしく話しかけられてきた積み重ねで爆発したのだ。

 ライブにおける精神状態というのは異質なテンションである。そこらのフォークグループとは訳が違い、エレカシはせっかくのロックンロールバンドだ。「日常の延長」であってはならない。「髪伸びたね」は明らかに日常である。しかし宮本浩次にしても他のメンバーにしても生きている以上「日常」の中に生きている訳で、休みの日には支笏湖やヨドバシカメラにプレステ2を買いに行ったりもしている。そんな日常をライブというハレの舞台で「化けの皮を剥がしに行く」精神状態にまで高めているのだ。

 私はZepp札幌に早めに着いてしまったので、鍵穴から漏れてくるリハーサルの音を聞いていた。「悲しみの果て」だ。歌詞を歌わずに叫んでいた。カート・コバーンのようだった。

 冒頭で「宮本浩次自身がこの問題に直面してしまっている」というのは、声をかけた客に対して一度「お前うるさぃ、出て行け」といいながらも、空気が静まりかえってしまったこの「空間をどうしたらいいか」ということを考えてしまったことだ。

 「フレンドリーでいいじゃないですか、最終日だし・・・フレンドリーでまぁね・・・俺の部屋に来たみたいにくつろいでくれ・・・って忌野清志郎は言ってたけど・・・僕の部屋は落ち着かないですよ・・・」正確に計った訳でないがおそらく15分から20分近く語りを始めた。「語り長いですか?まぁ、さだまさしの記録は破れないでしょう」・・・徐々になごむかと思えば最後まで静まりかえってしまった。

 エレカシがフレンドリーである必要は何処にもない。しかしながらも、エレカシにフレンドリーを求めるファンの方が多くなってきているのも事実なのだ。最終的には「売れてるヤツの勝ち」みたいな雰囲気の日本でエレカシは「売れていない」にも関わらず「勝ちに行こうぜ」と叫ぶ。いや、売れてないからこそ「勝ちに行こう」と歌っているのだとしたらどうだ。商業主義に押しつぶされたカート・コバーンは結果的に「負け」てしまったではないか。

 「金があればいい」「金だけあってもダメだ」「でたらめでもなんでもいい」「でたらめなんかじゃダメだ」・・・宮本浩次は極端な矛盾の中で叫び続ける。それが彼にとって生きるということなのだろうか。そんな矛盾に最大限共感できる俺達も含めて、無様な息を吐き続ける宮本浩次を見過ごす訳にはいかないのである。もちろん宮本浩次がいい人である必要なんか何処にもない。友達でもなんでも無いからだ。

 とは言う物のあまり深刻に考える必要も無い。私は音楽は純粋に楽しめばいいと思っている。音楽をやたら文章で考察したがる「ロッキン・オン」的見方はあまり好きではない。実際この日の「今宵の月のように」で私は少し涙がうるうるしてしまった。ライブで歌詞が染みすぎたのだ。ミヤジが目の前で歌う「今宵・・」。今まで何十回、何百回聞いてきたというのに一体どういう訳だ。

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