『敗北と死に至る道が生活』その2067
私が子供の頃「へび花火」というのがあった。夜やると見えないから昼間やるという訳の分からないやつ。へびを捕まえてきて、口の中に花火を刺して火をつける。というものではなく、ラムネみたいな固形物に火をつけると灰がへびのように出てくるという訳の分からないやつ。ものすごくいやな煙が出て、なおかつ掃除が大変だった。社宅の長屋だったので学年の違う小学生たちが友人だった。みんなで駄菓子屋まで花火を買いに行った。昼だけど前夜祭的に「へび花火」だけやって各自夕飯を食べに戻って再び夜集まった。
今でもあるんだろうか。「へび花火」。そういや「ねずみ花火」と「落下傘」も昼間やった気がする。
母方の実家に遊びに行けば、その頃まだ養蚕を営んでいて、花火の煙は「お蚕さん」(養蚕家はカイコのことを「おかいこさん」と呼んでいた)にかかるからと、家の庭が広いにもかかわらず川を一本はさんだ反対側でやっていた。井戸に西瓜を沈めておいたり、風呂の薪にとうもろこしを入れて焼いたり。振り返れば理想的な田舎の夏休みを体験していた。
昭和の夏。今みたいに嫌な暑さではなかった気がする。