『敗北と死に至る道が生活』その2068
最近の昼食はもりそばばかり食べている。一つ凝るとずーっとそれになってしまうのが玉に瑕だ。男だけに。ずーっと同じものを食べていると体に悪い。私の場合太ももに口内炎が出来る。吉村昭氏の「漂流」と言う半分ノンフィクションの小説があるが、そこでは無人島に流れ着き、アホウドリばかり食べていて足がおかしくなるという逸話が出てきた。このとき死んでいく仲間を見て「同じものばかり食べているとああなるのだ」と気がついた一人が・・・。江戸時代には太平洋に流されて戻れない船が相当数あったのだろう。
「漂流」と「破獄」は誰にでもおすすめする。「破獄」はある意味「羊たちの沈黙」に匹敵する。心理的に看守を追い詰めて脱獄を繰り返す男の話。実話だ。
戦争物が大丈夫な人は「戦艦武蔵」。日本が艦上戦闘機の凄さを世界に見せ付け「これからは飛行機の時代だ」と示したにも関わらず、大砲巨艦主義から抜け出せないでいた頃の話。大和も武蔵も海軍のつまらないプライドで沈んだ。
明日から8月。昭和21年から64年。
今読んでいるのは「永遠の0」。天皇陛下万歳の裏側の気持を描いている。戦争物は30代にむさぼるように読んだが、「永遠の0」は新たな視点を与えてくれる。語りであんなに語るか?などと野暮なことは気にしない。説明しないと伝わらないところをセリフとして書いているので仕方ない。
序章で登場人物に「特攻はテロだ」と言わせているので作者もそういう思想の人なのかと思い、少し不安を抱えながら読み進めていったら、中盤以降で証言者に朝日新聞への批判を言わせているので安心した。庶民を洗脳したのはテレビのない時代、新聞しかないだろう。朝日新聞の記者に対して元特攻隊員が怒りを露にするところは「その通り!」と思いスカッとする。小説だけど。
主人公は優秀なパイロット。特攻志願を拒否する。特攻を志願するのが男という風潮の中、拒否するのも男かもしれない。優秀なパイロットと優秀な零戦を一度に失ってその後戦えるのか?軍部のメンツを保つための玉砕を否定する。知覧や鹿屋に行くと特攻隊の遺書が展示してあるが、あれは軍部の検閲を意識したものだから本音など書けるわけが無い。そして我々が受け継いだのは豊かさとどっちらけだ。そんなことでいいのか?気持を収めるため靖国神社に参ろう。
真珠湾攻撃から沖縄戦まで海軍上官の心理、操縦士の心理、まるで見てきたかのようだが、恐らくそうだったのだろうと違和感が無い。戦争物を読んだことの無い人には「最初の1冊、そして最後の1冊」としてこの本を読むことをおすすめする。あくまでも「小説」だが史実として書かれているところはそのまま勉強になる。
戦争物を読み物として読んで「よかった」と感想を言うのも若干抵抗がある。