『敗北と死に至る道が生活』その2859
昨年の今頃日本中のミュージシャンが「歌に何が出来る」とうちひしがれていた。スプリングスティーンが答えだ。スプリングスティーン(Bruce Springsteen) の新譜「レッキング・ボール」を聴いた。一曲目のイントロから節が炸裂している。何を歌っているのか私には分からないので歌詞カードを見る。対訳で号泣してしまった。対訳で泣いたなんて人生で初めてだ。アメリカのことを歌っているが、日本にもそのまま当てはまる。先進国は”枯れ始めている”と感じている人も多いと思う。1曲目のタイトルは [We Take Care Of Our Own] 。訳者の三浦さんは「俺たちは自分たちで支え合う」と訳した。かつて[Born in the U.S.A.]と高らかに歌ったスプリングスティーンだからこそ説得力がハンパじゃない。
ちょっと著作権を侵害しそうではあるが、あまりにも素晴らしいので歌詞を引用させていただく。
[We Take Care Of Our Own]
権力者のドアを
叩き続けていた
家に帰る道を示す
地図を探してきた
善良な人々の
石になった心につまずいてきた
善良の道は
骨のように干からびてしまった
俺たちは自分たちで支え合う
星条旗がどこで翻っていようと
俺たちは自分たちで支え合う
筋肉から骨まで
掘っ立て小屋からスーパードームまで
誰も何もしてくれない
騎兵隊は出動しなかった
ラッパの音は聞こえてこない
俺たちは自分たちで支え合う
俺たちは自分たちで支え合う
星条旗がどこで翻っていようと
アメリカの夢の約束は
今この国のどこにある?
ライナーノーツの湯川れいこさんはこの歌詞に「あなたもそうだったのか.ブルースありがとう」と涙している。
対訳者の考察というのも添付されていて、[私たち]だったら[Ourselves]でいいはずだが、[Our Own]と言うからには何か言外に含まれていると、英語の分からない私に解説してくれる。相棒を失ってもスプリングスティーンは力強い。シャカシャカした携帯音楽プレイヤーでなく重低音のしっかり出る装置で正座して聴くべき音楽だ。