『敗北と死に至る道が生活』その4050
ピクニックとハイキングの違いはメシを食うか食わぬかの違いだと聞いたことがあるが、本当だろうか。縄文時代の親は子に「火は便利だが熱いぞ」と伝えながら摩擦熱で火を熾(おこ)してみせた。「父ちゃん。すげぇよ。炙るとうめぇよ」と子供は言ったもんだ。かどうか知らないが、今の親は子供に何を伝えられるだろうか。洗濯機の横についている2本のゴムローラーに洗濯物を挟み込み、取っ手をグルグル回しながら「こうやって脱水すんだ」とか、黒電話のダイヤルの数字の穴に指を突っ込み、「ここまで回して指を抜くんだ。これの繰り返しだ」とか。現代では何の役にもたたないどころか、自分がスマホで電話の掛け方を教えてもらう始末だ。縄文時代の親の方が枯れない技術を持っていた。せいぜい「黒い服でハイキングに行くと蜂に刺される」とでも言っておけ。いずれスマホを指でこねくり回すのも時代遅れになる時代が来る。