『敗北と死に至る道が生活』その4841
牡蠣殻に植え付けられた海苔は一年かけて育ち、やっと成長したと思ったら、何者かに摘み取られ、陸に上げられ、海水でない水で洗われ、刻まれ、仲間と抱き合わされて平にされて乾される。心の整理もつかないまま袋に詰められ、暗い夜道をトラックで運ばれてたどり着いた先は、埼玉か千葉であろうか。昔と比べて随分衛生的になった食品加工業者で、ビニールに挟まれて、米に巻かれおにぎりとして商品となり、配送される。コンビニという店で売られて、売れ残る可能性も秘めていたが、誰かに買われ、誰かの細胞となるならば、仕方ないと決めた矢先、コンビニおにぎりの剥き方が下手くそな奴だったため、ビニールの隙間に残ったまま、呆気なく捨てられた。助かったのかそうでないのかも分からぬまま、今度はゴミ清掃のトラックで夢の島まで運ばれ、完全に焼かれた。そんな運命の海苔もある。100m走スタートでフライングして帰る人の気持ちはこんな感じか。全然違うと思う。