『敗北と死に至る道が生活』その264
あなたは日本国内で一番好きな都道府県というものを明確に意識したことがあるだろうか。それには全ての都道府県に実際に行かなければならないし、例え一度行ったとしても、それでその土地の全てを分る訳でもない。例えば季節によっても違うし、行ったときたまたま天候が悪ければあまりいい印象が残らない。私はこういった理由から旅をやめた。旅をやめて旅行に切り替えたのである。ゴールデンウィークは鹿児島に行って来た。何故ならば、私が日本国内で一番好きな都道府県が鹿児島だからである。東京の人は九州に行くとなると、博多・湯布院・長崎・阿蘇あたりだろうか。鹿児島に行くという機会があまりないかもしれない。鹿児島は最南端なので通過点にもならない。つまり鹿児島に行こうという目的以外には鹿児島に行かないのである。そこが埼玉と違うところだ。東京から新潟にスキーに行こうとしたら埼玉を経由しなければ行けない。千葉・茨木・栃木と迂回すればいいのだが迂回する意味がよく分らないのである。
鹿児島は本当に良いところだ。まず繁華街(天文館)が小さい。東京は繁華街が点在していて不便だ。そして路面電車が走っている。歩きながら見ると本当に風情がある。車から見ると本当に邪魔くさい。右折待ちで線路内に立ち止まるのが果して正しいのかさえ分らない。更に火山灰が降るので晴れた深夜でも傘をさしている人がいる。雨が降ればほぼ全員が傘をさすほどだ。おみやげには仙台銘菓『萩の月』をパクッた『かすたどん』がある。
もっと南に行けば指宿には生き埋め地獄の砂蒸し風呂。夏になるとスイカ割りの棒を持った子供がオプションとして追加される。どぶに鯉が泳いでいる知覧。富士山をパクッた開聞岳がある。知覧のお茶畑から眺める開聞岳は絵に描いたようだ。何故ならば字に書いてもよく分らないからだ。もっとも私は、桜島がどーんと構えているだけで満足なのだが。鹿児島は人が優しい。行く度に自分の傲慢さを反省してしまうほどだ。優しさの波動が土地からも人からも溢れている。それが中島美嘉の出身地でもある鹿児島だ。