『敗北と死に至る道が生活』その487
それはまさに矛盾するようだが彼は激烈なる変化を求めていなかったのではないか?むしろ周りの人間が変化しすぎて自分は何も変わっちゃいないのに、なんで売れたら手のひらを返すようにもてはやすのだろうと思ったのではないだろうか。「俺は何も変わっていない」「ちっぽけな存在だ」だった筈なのに。ある日突然ミュージックシーンの寵児となりニルバーナという名前だけが歩き始めた。
俺達のニルバーナが手の届かない存在になりはじめた。それが、橋の下で暮らしていたときに白目で見られていたあの目と同じ目が今度は全く違う目で見られている。世間なんてこんなもんなのか。情熱が冷めていく。世間が盛り上がれば盛り上がるほど彼は冷めていく。ステージ上で自殺めいた行動を取るようになる。
そして運命の1994年4月5日彼はショットガンで自分を殺してしまった。
ロッカーの生き様は壮絶である。ロックバンドの動機付けなんてハングリー精神とか大人社会への反抗精神とか何らかの不満から生じる場合が多い。そしていざミュージックシーンに出るとお金は手に入るし、周りからはもてはやされ少しぐらいのわがままは通ってしまう。そこで人はおぼれてしまう。そうやってダメになってしまうミュージシャンは沢山いる。
純粋であればあるほど尾崎豊やカート・コバーンのような運命をたどってしまう。自分が大人になってどうするか。「妥協できる」ということは果たして大人なんだろうか。
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