『敗北と死に至る道が生活』その628
会社に妙な男から私個人宛てに電話がかかってきた。「資産はやっぱり大口定期かなにかで運用してますか？」などといきなり言ってくる。「仕事中なんで」と言って切ると再びかかってきた。「おちょくっとるんですか？」と言われた。関西弁だ。逆ギレもいいところだ。「仕事中だし、知らない人に貯金のことなんか教える訳ないだろう」と言うと「こっちだって仕事中だ」と逆ギレ。会社なのでぐっと冷静になった。詐欺なら詐欺で何かを買えとか言えばいいところを目的も言わず「見ず知らずで○○さんも不安でしょうから、一度会ってもらえませんか」などと抜かす。私は出向勤務なのでここの会社の電話番号を知っている人はいない筈だ。話も上の空でどこから調べたんだろうと思っていると「話聞いてますか？」と逆ギレ。
「お互い時間の無駄ですから、次の名簿の人に電話したほうがいいですよ」と丁重に言って切った。またかかってきた。別の人に出てもらい、要件を聞かない限りつなぐわけにはいかないと言って切ってくれた。それ以来かかってこない。こういう男はどういう人生を歩んでそんなことをしているのだろう。
実家に電話したら、高校時代の友人と名乗る男が、久しぶりに地元に戻ったので食事でもどうかと思い電話してきて、勤務先の電話番号を母から聞きだしたらしい。母はあまりしつこいので教えてしまったと。卒業名簿かなんかで片っ端から電話しているのだろうか。随分効率の悪い詐欺だ。
昔なら母を叱りとばしていたところだが、すでに７０に近い悪気の無い母を叱る気にはなれない。世間が巧妙になっていくのに追いつける年でもない。悪いのはどこのどいつかも分からない電話の主だ。いま電話番号の変更手続きをしている。住所も変えたいのだが、引越さなければ変えてくれないらしいのだ。
ネットで"電話 勧誘"で検索したら、やはり卒業名簿から電話をかけまくっているらしい。中にはえらいけんまくで話すので受話器を放っておいたら向こうから切って、再びかかってき、「何でそういうことをするんですか。こっちだって生身の人間ですから傷つくんですよ」と言われたらしい。ここまでいくとコントである。私なんか変な人間の部類に入ると思って生きてきたが、全然まともな方だな。
子供の頃は両親からいろんなことを学んだはずだが、いつのまにか立場が逆転している。そして私もだんだんおいぼれていく。つい最近、電池を逆に入れてしまったことに気が付かず、機械が壊れたと思い込んでいた。悲しい事実だが、老いに抗うことは格好の悪いことだ。・・・・・電池程度を老いのせいにするなぁ。