『敗北と死に至る道が生活』その1770
夜10時。居酒屋とカラオケ屋の間で『すっかり出来上がっちゃったよ』と言うヤツがいるが、むしろ壊れているように見える。本当に口に出来るのは鉄腕アトムとか、アシモ君だろう。最後の部品を組み立て電源を入れた瞬間口にする言葉だ。『すっかり出来上がっちゃったよ』といいながら冷静にゲロを吐く。それでこそ人型ロボットだ。家族で旅行の話が出たのだが、それはいわゆる家族旅行ではないだろうか。考えてみたら母一人、子二人、父一人。四人で旅行をしたことなど皆無だ。三人までならあるが。早くしないと死んでしまうかもしれない。一生に一度の家族旅行の話をしだしたのは私だが。母は群馬生まれなので海が見たいと言う。山に囲まれて育ったからだが、では海の近くで育った人は「山が見たい」と口にするだろうか。きっと子供の頃を懐かしんで「海が見たい」と言うだろう。どこで生まれようが人は海が見たくなる。
車ででかけるか。貧乏人間って何だどもが車を控えている今だ!テイク・ア・チャンス。うちの辞書登録するとこんな文章になるぞ。「貧乏人どもが車を控えている今だ」だ。
父は軽い脳梗塞の後遺症で杖を突いている。高速道路では障害者用のスペースがあるが、あそこに駐車してもいいものだろうか。
ネットで調べてみた。障害者マークをつけるのは運転手が障害者であるので、私の車には付けられない。もっとも100円ショップで売っているので”頭に障害がある人たち”はあれを買って便利な場所に止めてしまうらしい。運転手が健常者でも同乗者に障害者がいる場合は利用して良いっぽい。トイレまで歩くのもままならないので許してくれるだろう。
となると親父が杖を突いている姿を目撃しない人からみると、私は『勝手に止めた”頭に障害がある人たち”』の立ち位置になってしまう。正義感の強い人から、障害者マークのない車は止めちゃダメだよと説教されるかもしれない。「赤ちゃんを乗せています」というステッカーが売っているが「父を乗せています」じゃダメだろうか。「ああそうですか」としか言いようが無いではないか。