『敗北と死に至る道が生活』その2055
女は穢れた血を吐き出して新しい血を再生する。男は穢れた血を溜め込んで一生使い続ける。こうは見えても私は献血で倒れたことがある。冷や汗が出て顔面が蒼白になった。献血で倒れて輸血したら恥ずかしいのでしばらく横になっていた。どうやら神経迷走という病気らしい。想像力がたくましすぎると誰でもなるそうだ。悪いほう悪いほうへと考えてしまう。
それからは 400ml でなく 200ml にしようと思って「200ml でお願いします」と言ったら「200ml だったら要らない」と言われた。だったらその選択制度をやめちまえばいいのに。善意で申し出ているのに「要らない」とは。それ以来、献血には行っていない。
つい先日、健康診断で血液検査があった。いつもより痛い気がした。大人はこういうの我慢してしまう。どこまで痛かったら普通じゃないのかが分からない。案の定、採血中めまいがしてきた。女性の看護士に顔色が急に悪くなったと水を飲まされて中断された。「いつもより痛かったですよね」と言われた。なんで分かったんだろう。逆の腕から再開されてしまった。来年も再来年もきっとそうなる自信がある。
一度倒れると恐怖で「想像しただけで精神状態がおかしくなる」。だから採血のとき針を見ないであさっての方を見ている。あさっての夕飯は何にしようか考えている。今晩のも決まっていないのに。朝食を抜いてくるように言われたので余計にくらくらする。とは言え普段から朝食など喰わない。
男は血を流さないから寿命が短いと聞いた。
人生における女性の生理の日数合計 ≒ 女性の平均寿命 - 男性の平均寿命 だそうだ。この式をどう解釈すればいいのか分からない。今のところの解答は「ふぅん。で?」だ。
近い過去までは世界中で女は血を出すので穢れた存在だとされてきた。女は穢れた血を吐き出して新しい血を再生する。男は穢れた血を溜め込んで一生使い続ける。穢れているのは男のほうだろう。
父より母が先に死んだらちょっと困ったことになるが、逆だと安心だ。私は一人暮らしが長いので金さえあればどうにかなる。