『敗北と死に至る道が生活』その272
いくら旅慣れた私でももう少し庶民の気持ちに近づこうという意志はある。例えば手荷物検査の行列に私はいつも並ばない。面倒だからだ。「出発時刻間際なのでちょっと失礼」を略して「すんまへん」と一言言えば誰だって入れてくれるのである。だからって並ばないのは失礼じゃないか。しかも出発時刻には余裕で間に合うのである。やっぱり失礼なのだろうか。乗ったら乗ったで飛行機のトイレのドアはどういう開け方になっているのだ。ご老人などは開け方が分からずに、中に人がいるもんだと思いこんでずーっと待っている場合がある。そんなとき私は親切なので、ご老人の目の前で開けてやるのだ。もちろん自分が入る為だ。
いくら旅慣れた私でももう少し庶民の気持ちに近づこうという意志はある。例えばなるべく手荷物を預けたくない。到着時にターンテーブルから荷物が出てくるのを待つのが面倒だからだ。とはいうものの機内に持ち込めるサイズは制限されていて、混んでいたら尚のこと預けざるを得ない。
俺「これ機内に持ち込めますか?」
飛「ちょっと大きいですね」
俺「中にパソコン入ってるんだけど」
飛「取り出してください」
俺「別に壊れてもいいですから」
飛「それじゃ手渡し品として預かります」
と一言言えば誰だって「手渡し品」にしてくれるのである。フラジャイルのシールも貼ってくれる。到着時にターンテーブルより優先して係員が手渡ししてくれるのだ。しかも中にはパソコンなど入っていないのだ。やっぱり失礼なのだろうか。