『敗北と死に至る道が生活』その296
例え話を例え自体に例えるととてもおかしなことになりがちだ。「白魚のような(魚)魚」とか「(うま)カモシカの足のようなカモシカの足」とは決して言わない。例えばそれは暑い(雪)夏の日の午後。いたるところからセミの鳴き声が聞こえる。人々はこう言うだろう。「セミの嵐だな」と。ところがこれを台風に例える人は少ない。
例えば気象庁(3J)午後3時発表。「13号、14号、15号とまとまって日本に向かっています」「おぅ、台風の嵐だな」台風自体が嵐なのだからひとたまりもない。
例えばそれはインドにありがちだ。カレーの鍋に銀蝿が沢山飛び交っている。「おぅ、銀蝿の嵐だな」。こうなると「あらし」と言わずに「らん」と言ってしまった者勝ちだ。
例えば(音)音楽。今時そんな例えはないが、激しいリズムの音楽に人々は誰もが踊りくねりながらも「随分(パ)パンチの効いたロックだな」と言っただろう。おそらく70年代にはそんな例えをしたのではないか。
ところがこれをボクシングに例える人は少ない。「(パ)パンチの効いた(パ)パンチですねぇ」・・・当たり前だ。「(パ)パンチの効いたキックですね(驚)」・・・一体彼はどんな体勢なんだ。