『敗北と死に至る道が生活』その307
今ベッドが欲しい。しかしながらこの狭い部屋。そんな物を置いたら寝る場所が無くなってしまう。悩ましき浮世。食べ方にこだわる人がいる。と言っても箸の持ち方とか、テレビを消せとか、膝は立てるなとか、もう頬杖はつかないとか、月はどっちに出てるとかいう問題ではない。食べ物も口に入れる向きによって損得があるらしいのだ。
例えば「鮨」。 ネタの方に醤油をつけたいという人は多いだろう。だから逆さまにして醤油皿につける。逆さまにするのだからやっぱり箸より手で食べた方がよろしかろう。問題はこの後だ。みなさんはネタが上でシャリの方を下にして口に入れるだろう。これだと味覚を味わう舌の部分にはシャリがあって、せっかくのネタの味を100%味わえていない。
他のネタを食べる場合も結局真っ先に「シャリ」を味わっているに過ぎない。ネタなんかどーだっていい!!と言っているようなもんだ。本当の通は口に入れるときも逆さまに入れるのだ。醤油を付けるときも逆さま、口に入れるときも逆さま。となれば「鮨職人が初めから逆さまに握ってくれればいいのに」と誰もが思うだろう。
という話をKさんと雑談していたら、彼は「ハンバーガーもそうだ」という。下のパンは土台だからどうでもいい。上のパンはゴマかなんか付いてていかにもうまそうだ。だから上を下にして口に入れる。
そう考えると殆どの食べ物が、おいしそうに見えるところは全て上になっている。我々はこの事実をふまえて、おいしいものを食べたいなら逆立ちして生きていかなければならない。町で逆立ちしている人を見たら「お、本当のグルメなんだな」と思わざるを得ないのだ。