『敗北と死に至る道が生活』その598
生きる。生活する。答えは簡単である。しかしその内容は簡単どころではない。一体日本人は生きるということを知っているのだろうか。小学校の門をくぐってからというものは、一しょう懸命にこの学校時代を駆け抜けようとする。その先には生活があると思うのである。学校というものを離れて職業にあり付くと、その職業をなし遂げてしまおうとする。その先には生活があると思うのである。そしてその先には生活はないのである。現在は過去と未来との間に画した一線である。この線の上に生活がなくては、生活はどこにもないのである。・・そこで己は何をしている。(青年/森鴎外)死を怖れもせず、
死にあこがれもせずに、
自分は人生の下り坂を下つて行く (妄想/森鴎外)