『敗北と死に至る道が生活』その635
長崎の少女は最初「ごく普通の小学生」だと報道されていた。普通の少女がそんなことをしたのだとしたら、私だって何をしでかすか分らないじゃないか。会議中に革靴で部長の頭を思いっきり殴ってしまったら、私は今後どういうことになるのだろうと常に妄想している。そんな妄想が本人の意識を飛び越えて実際にやってしまう可能性を常に不安に思っていた。長崎の少女が普通ではなかったと聞いてほっとしている。でも薬もやらずにあんな子供になってしまうのが恐ろしい。むしろ『薬やってました』と言って欲しいくらいだ。窪塚も含めて。
バトルロワイヤルが好きだと正面きって言う小学生はきっと沢山いるだろう。それは大人が困るからだ。私も大人を困らせたいだけに、変なことを言ってみたりした。カエルの尻に爆竹を仕掛けて爆発させたり、夜にトンボの尻尾にマッチを刺して火をつけ『ホタル』だと叫んでみたり、カタツムリをセロハンテープに一列に貼り付けて車に轢かせたりした。人間に何かしようとは考えもしなかった。地球に人類がいなくなったら宇宙を認識する生命体がいなくなってしまい、その状態を『宇宙がある』と言えるのか不安だったからだ。
あの加害者少女はそんな裏表なくバトルロワイヤルが好きだったのだろう。それが一番恐ろしい。