『敗北と死に至る道が生活』その662
私は耳が遠いので何か問われても何を問われているのか分からない。何度も『え』と言うのも馬鹿らしいし、どうせ庶民の問いかけなどロクなもんじゃないだろうから、適当に返事をする。『あー』とでも言っておけば大抵の話は終わる。この時はっきりとした『あー』でなく英語の発音記号でいう『ae』程度の曖昧さも必須だ。10回に1回くらい『えーそうなの?』と再び問い掛けられたその時。その時こそ『何が?』というチャンスだ。しかし、そうまでして聞きなおしたところで庶民の問いかけなどロクなもんじゃない。何々が好き。誰々が嫌い。あれ見た?。そんな程度の会話しかない。それを否定すると世の中の99%の会話が成立しなくなる。だから私は寡黙だ。特に満員電車に独りで乗ったときなんか一言も発しない。