『心に積もった日々の後悔が時となく平和な俺を襲い来る生活』その1575
大掃除前に部屋の物を片付けている。掃除という行為の邪魔をするのはいつだって生活である。例えば引越し前の部屋。四角い床がそのまま四角い。このままだったら掃除が楽だ。そこに生活という怠惰を持ち込んだ瞬間から掃除がしにくくなる。ならば何もない状態で生活が出来るだろうか。ゼロには出来ないが限りなくゼロにしたい。千原ジュニアの部屋はベッド以外には何もなかった。生活感を徹底的に排除したのだろう。それともテレビ用か。ドラッグストアで売られている５箱パックのティッシュ。なんだろう。５箱ある必要ってなんだろう。１日１、２箱消費するのなら分かる。今までそれが普通だと思ってきたが、メーカーの押し売りである。１箱必要なのに５箱買ってくる。そして残りの４箱はどこかに保管しておかなければならない。『保管しておけばいいじゃないか』という人は保管しておけばいい。最近は保管する空間が無駄ではないか？なんなんだあの箱の色使いのセンスは？と感じている。
詰め替え用のコーヒー。セールで買ってしまった服。新聞屋が置いていった洗剤。おまけで貰った何か。いつかやるであろう作業中の趣味。滅多に使わない調味料。プライスレス。こういう細かい何かたちが掃除の邪魔をしているのだ。
コンビニに行けばティッシュは１箱で売っている。しかも白い箱で綺麗だ。コンビニは定価っぽいが。数十円程度安いからといってまとめ買いをしなくてもコンビニがある。地方と都会じゃ考え方も違ってくると思うが。スーパーに行って飲料水を箱で買うのもやめてしまった。必要な都度コンビニに行く。１本だから手で持ってこられる。スーパーだと車で行ってよっこらしょという作業が必要になる。数十円程度安いからといってガソリン使って行ったらその数十円は本当に得なのだろうか？あっちのスーパーが安いからと言って何キロも遠いスーパーに行く意味があるのだろうか。
夏物の服はしまっておくのでなく、捨ててしまった。Tシャツなど安いものだ。来年買えばいい。保管するとなると収納場所、収納グッズ、防虫剤。収納グッズ自体の掃除。物が物を増やし、掃除を困難にする。捨ててしまえば場所もグッズも防虫剤も掃除の必要もなくなる。この説明をされてもなお保管するのがうちの親。世代の差か。多分死ぬまで使わないものであふれている。婆さん自体を捨ててしまうという姥捨て山の意味がようやく理解できる年になった。
次の夏は新品を着たほうが気持ちがいい。タンスも下着と靴下以外はカラッポになってしまった。下着と靴下用だけ入る箱に入れてしまおう。これでタンスは捨てられる。タンスがなければ『タンスの裏にたまる埃』もない。倒れてくる危険性も無い。捨てることが気持ちよくて部屋に帰ると『これは捨てられるだろうか』と考えている毎日。
この理屈で台所の下の戸棚はカラッポになった。男にありがちなパスタ鍋。パスタ一人分作るのなら食べに行ったほうがよっぽどいい。天袋には賃貸部屋の備品しか入っていない。本もCDも捨ててしまった。エレカシ関係だけは捨てられなかったのが気がかりだ。パソコンに取り込んでしまってからは、触ることもない。触ることが無いものが部屋に存在している意味があるのだろうか。ダンボールに入れて天袋にしまっておくか。その程度の人間味はまだ残っている。これを捨てられれば仙人になれる。
捨てることにより、『それでも持っている物』の価値がぐんと上がる。そして次に何かを買うときに慎重になる。捨てるというのは逆に物を大切にするということだ。多分若い人には理解出来ないだろう。私がおっさんだからだ。
千利休が死んだとき茶碗と箸と数冊の本だけだったそうだ。
本が余計だ。
ことによると箸も要らないかもしれない。