『敗北と死に至る道が生活』その3516
30代の頃私はバカだった。今日、お昼にてんやで天丼を食べていた。武蔵小山商店街は老若男女とりみだれているので、昼間っからビールセットを頼む人もいる。天ぷらとビールがセットになったものだ。ビールを先に持ってきてもらうとビールを飲み終わった頃に天ぷらが出てくるので、「ビールは先にお持ちしますか?」と必ず聞いてくれる。
隣の老夫婦にも聞いていた。「先でいいです」と答えていた。その後別の店員が「ビール先でいいですか?」と同じ人に聞いた。普通に「はい」と答えていた。
それを見て私は思い出した。30代の頃私はバカだった。「さっき言っただろが」と答える行為を平然とやっていたのだ。「はい」と言えば済むだけのことだし、それによって腹が立つこともない。世間に腹が立つという人は腹が立つ行為を助長するようなことを自ら行っている。
とは言え、人はおろかだ。仮に私が70歳まで生きたとして、今を振り返ると「あの頃私はバカだった」ときっと言うのだろう。そして人間が丸くなって最後のトゲが取れた時、人は死ぬ。だから世界はいつまでたっても未熟だ。
誰にだって沢尻エリカのような時代がある。だから私は沢尻エリカを「人間らしくて好き」だ。対局に位置するベッキーを逆に不思議な人だと思う。
今日の「あの頃の一曲」は FOREIGNER。こんなバンドをインターネットの無い時代にどうやって知ったんだろう。高校受験で買ってもらったダブルカセットデッキにリピートという機能がついたばかりに繰り返し聞いていた。リピートって言っても現代のように正確ではなくカセットテープの空白部分が長い箇所を「キュルキュル」巻き戻しながら自動的に探すという超アナログな方法だった。当時の技術者はこれはこれで面白がって作ったんだと思う。今はフレームワークと称した檻の中でしか命令が下せない、世知辛い浮世となって技術者の面白みは皆無だ。技術者をやめようかと思っている。