『敗北と死に至る道が生活』その5009
どういう訳か大金が振り込まれた。そんなときの対応は教科書にも書かれていない。どっかの町で振込ミスにあって全部引き出して逃げてしまった人が罪に問われている。今の私なら怖くて手を付けられないと思うが、20代の自分だったらどうだろうかと翻って鑑みるに、同じ事をしていたかもしれない。
こんなことがなければ普通に生きられただろうに、町の事務手続きのミスで人生を変えられてしまったのだ。加害者なのか被害者なのか分からなくなってくる。
10代。世間の浮かれ具合に腹が立ち80年代ってなんて薄っぺらなんだろうと思っていた。とくに「とんねるず」。あいつらが根暗を際立たせた諸悪の根源である。
20代。借金まみれだった。A社から借りたお金をB社で借りた金で返済し、B社にはC社で借りた金で返済し、C社にはA社から借りたお金で返済していた。これは冗談じゃなく本当の話。このABCループという仕組みを運用したまま自分が抜けてもそれで回っていくものだと信じていた。
30代。やはり27クラブにぶち当たった私は30代で職を変える。海外出張が増え、香港のビクトリアピークでカクテルグラスをたゆらせながら世界征服を企んでいた。実際は心が病んでいて世間とうまく渡り合えなかった。
40代。いい加減大人になるかと思いきや人生で一番タチが悪い時代だったかもしれない。キャバクラで一晩10万円使っていた。これは冗談じゃなく本当の話。キャバクラでガストロンジャー歌う痛い人だった。
そして今。50代。いい加減落ち着いたと思ってはいるが、未来から振り返ればまだまだ痛い人なのかもしれないと思いながら大人しくしている。